サロン・ド・テーブルUmemoto 代表 梅本 光江 連載コラム 暮らしを彩るWatashiiro 第25回  お裁縫箱と指貫

お裁縫箱と指貫

ひと針、ひと針…ていねいな針仕事。 どこの家庭にもあってお母さんの玉手箱みたいなお裁縫箱… それはそれはとってもきれいなお菓子の空き缶だったり、頂き物の空き箱だったり… そんな在りし日がふと思い出されますが、近頃はまた少し違う情景なのでしょう。

大切にされてきたお裁縫箱の中にはたくさんの小さなお道具がいっぱいで、その中に入っている“指貫”はご存知ですか?

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私が持っていたお裁縫箱の中には、なめし皮で作られた指輪のようなかたちの指貫がはいっていました。 以前アンティークショップなどでとてもかわいらしく何とも素敵な指貫に出会い、私が使っていた指貫とは全く違う形でその小さな宝物みたいなものから目が離せなくなったことがありました。 これは日本だけの道具ではなくヨーロッパでは“シンブル”と呼ばれ、もともと針仕事で使うのですが、最初は帆船の帆を縫うために作られたとのこと。指輪の形だけではなく指先全体を覆うことができるように小さなカップのような形のものもたくさんあったのです。

便利なものや、既製品で素敵なものなどたくさんある私たちの周りでは指貫をはめてお裁縫をすることがごくごく少なくなったように感じるのですが、ヨーロッパでは女性に幸運をもたらすものとして古くから親しまれてきた指貫なんだそうです。 素材も真鍮・銀・アルミ・べっ甲・象牙など様々で、デザインもいろいろ、シンプルなものから凝った物まで作られていました。

女の子は幼いころから洋裁を教え込まれ、エプロンのポケットに小さな指貫を入れているのが当たり前のような時代もあったようです。ほら、ルイスキャロルが書いた“不思議の国のアリス”でもドードー鳥からもともと自分のものだった指貫をもらうシーンが出てきます。そして少し前の朝のTV“マッサン”ではエリーがペンダントとして指貫をつけていたんですよ。

コレクターではないけれど指貫が大好きになった私は最近金沢の九谷焼で小さな陶器の指貫を見つけました。

初めて買ってもらったサーモンピンクのお裁縫箱、今はもうないのですが、陶器の“シンブル”クッキー缶のお裁縫箱に仲間入り!!
この春は少し時間を見つけてかわいらしいお花たち、Teaナプキンに刺繍してみようかな…

サロン・ド・テーブルUmemoto 代表 梅本 光江
監修
サロン・ド・テーブルUmemoto
代表 

梅本 光江

学生の頃から花の美しさに魅せられ華道を学ぶ。
その後、ヨーロッパのフラワーアレンジメントやテーブルコーディネートに関心を持つようになり、インストラクターを取得。
現在、札幌で唯一のお花・お料理・テーブルセッティングを中心としたおもてなしとマナー教室、そしてプリザーブドフラワーの教室を開講。その他、ギフトやウエディングブーケ、ディスプレイなども手がけている。