八巻滋倶(やまきしげみ) 特別連載コラム 予防医学のすすめ〜今私たちができること〜 心と体 自律神経 治療経験から

心と体 自律神経 治療経験から


前回は自律神経の働き、症状と、乱れる原因を挙げました。
今回は、治療経験から得た自律神経の整え方をお話します。
ある一人の患者様が来院して来られました。訴えは足首の腫れと歩行困難でした。三ヶ月間整形外科に通院し改善されず、その後鍼灸院に三ヶ月通院しましたが改善されず、六ヶ月が経ってから私の治療院へ紹介されてたずねて来られました。三回治療させていただきましたが、結果は何も良くならないと訴えてこられました。

足首の障害で辛い毎日を送ってきたことが原因だと思われますが、非常に性格がゆがんでしまっていて、常に人のせい世の中のせいにして、大手メーカーの支店長奥様で自分は知識が豊富で良識のある人間だという雰囲気をたっぷり醸し出された方でした。私はそこで、我慢我慢と思い、三回治療しても何の改善も無い訳ですから、治療内容を変更して自律神経を整える治療を行なってみました。

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勿論、気の難しい患者様ですから、足首の治療を全く行なわないわけにはいきませんので、パフォーマンス程度の治療も足首に行い、その日は治療を終了し帰っていただきました。
次に通院して来られたときに、その患者様が、「今までで一番良かった」と言って下さり、私はこの患者様は「自律神経のバランスの乱れが原因の不調」と判断しました。
その後、自律神経を調整する治療を行ないながら、その患者様からお話を聞き、不平、不満、家族関係、友人関係、いろいろな角度からお話をし、この患者様の欠点が見えて来ました。問題の解決は、「心で思ったことを素直に表現する習慣を身に付けること。」頭で考え頭で表現すると、会話が面白くなく、相手に伝わりにくく、誤解を受けることがあることを指導しました。予想以上に素直に話を聞いて下さいました。
その治療後、腫れて黒ずんでいた足首は柔らかくなり、確実に変化が出ました。翌日また来院下さるとのことで待っていたら、足首の腫れが引いて、長い間腫れていたために皮膚が硬く黒ずんでしまってはいますが、内くるぶし、外くるぶし、アキレス腱がしっかり見えて、正常な反対側の足と変らない状態になりました。勿論歩行も出来るようになりました。
この経験から、自律神経は心と体の架け橋であることを確信し、心が体調を乱したり、活性化することを、治療の現場で患者様と出会って知っていく始まりとなりました。
心の状態を穏やかに保つことが、自律神経のバランスを保ち、体調、仕事、生活を豊かにすることに直結するということです。
生きていくと、時には心が大きく乱されてしまうことが起こります。そのときの自分の心の保ち方を知っているのと、知らないのとでは、大きく変ってくると思うのです。
自分の心臓はどうか、自分の肝臓はどうかと五臓六腑を心配するのは間違いです。「今の自分の心の状態は穏やかかそうでないか」に心を配ってみて下さい。心が穏やかであるなら、五臓六腑も穏やかにご機嫌に働いてくれているのです。

次回はうつのお話。

鍼灸師・整体師・気功師・医療法人福徳栄会理事・上海専家医学研究中心客員教授 八巻滋倶(やまきしげみ)
監修

八巻滋倶(やまきしげみ)


鍼灸師・整体師・気功師・医療法人福徳栄会理事・上海専家医学研究中心客員教授
北海道札幌市出身。治療家として多くの患者の診察する一方で、オリンピックメダリストのメンタルトレーニングやボディケア、大手健康器具メーカーや病院での講演、上海交通大学での講義なども行ってきた。約10年前からは、健康講座を全国各地で開催し、8,000人以上に講習をしてきている。また、薬石を使用したジェル「マイクロウオーターシリーズ」を開発し、皮膚からの健康法を推奨している。